「ふむ…」



手にはたくさんの絆創膏。腕には所々赤く腫れていて足には青いアザ…。
一体何をしたらこんな事になるのか…。
しかも、最近はあまり相手をしてくれない…。彼女は私の恋人なのに。



「はぁ…」



ため息を漏らすと後ろからクスクスと衣笠先生が笑っていた。



「鳳君が溜息なんて珍しいですね」
「衣笠先生…」
「ふふ、彼女が気になりますか?」
「そりゃ…ね。毎日毎日どこで怪我をしているのだか」
「確かに、少し見ているこちら側が痛くなりそうですね…」
「夏だから肌の露出が多くて余計に目立つんですね」



校門で生徒を見送っている彼女…を見つめていた。



先生の場合、天然な部分がありますから…どちらかというと無茶していないかって言うのが心配なんでしょう?…それでは、僕は先に失礼しますね」
「衣笠先生、また明日」



本当、衣笠先生の言うとおり点。B6を卒業させようとする時も無茶していたからかなりやつれていた…。
でも、元気なフリをしていたんだ。本当、困った人だ。



「あれ?!鳳先生、まだ残ってたんですか?」
「さっき終わったところなんだけど、君が校舎に入るのが見えたからね」
「待っててくれたんですか?」
「当たり前だろう?」



僕らは恋人同士になったんだから…と耳元で囁くと、真っ赤に頬が染まった。
初々しいというか…可愛くて困ってしまうね。



「今日はもう帰るかい?それなら家まで送るよ?」
「あー、今日はまだやることがあって……」



…ふぅ、コレで断られるのも三日目だね。さすがに僕も怒りそうになるんだけど。



「何があるんだい?手伝えるなら手伝うけど…」
「あ…えっえっと。そんなんじゃなくて…」



君は僕に隠し事をしているんだね。悪意があるとは思えないけど。



「あっでも…駅まで一緒に帰りたいです……」
「クス…。あぁ、じゃあ駅まで一緒に帰ろうか」



少し照れくさそうに彼女が言った。
本当に君は可愛らしいね。でも、その傷は…やはり見るにたえないな。







結局、を駅まで送ると彼女はすぐにどこかへ行ってしまった。
そのまま帰ってもよかったけど…。
やっぱり最近の彼女の行動は腑に落ちなくて、のマンションの前で待つことにした。



「はぁ…なかなか上手くいかないなぁ」
「何が上手くいかないのかな、
「おっ鳳先生!」
「プライベートでは名前を呼ぶ約束だよ。で、はこんな時間まで何をしたのかな?」



こんな時間…そう、夜の11時を回っていた。



「最近、君の様子がおかしいから気になっていたんだ。毎日毎日怪我も増えるし…僕が気付かないとでも思った?」
「あっあの…」
、説明してくれるね」



これ以上隠せないと思ったのかは僕を部屋に入れてくれた。
コーヒーを入れた後、ソファーに座って話し始めた。



「ごめんなさい…」



彼女の言葉が咄嗟に理解できなかった。一体何に謝っているのか分からなかった。



「えっと…それはどういう?」
「晃司さんに隠し事をしてて…。それで怒ってるんですよね?だったらごめんなさい!だから別れるなんて言わないで下さい」
「は?」
「…え?」



はて…僕は別れよう…なんてに言ったかな?



「僕はただその隠し事が何かを聞きたいだけだよ?」
「え?」



目を丸くしてかなり驚いている…。
…この私がこんなに愛しているのに、何故別れるって所まで話が進んだんだか……。
ついおかしくて私は笑ってしまった。



「わっ笑わないで下さい!」
「ごめんごめん。で、君が隠していたことって何かな?」
「え?……………料理、教室に通ってて……」
「は?」



予想外の回答に今度は私がメを丸くしてしまった。
は少し恥ずかしそうにしていて…私のために……というのは少し自惚れすぎかな?



「晃司さんに…料理を食べて欲しいけど……。私の料理ってその…。酷いから、だから練習しなきゃって」
「それでこんなに傷だらけに?」
「あはは…私ってドジだから、すぐに切ったりして」



あはは…と苦笑するの手を握って見つめた。
とても愛しい。こんなに…こんなにも私を思ってくれているが愛しい。



「こっ…晃司さん!?」
「君のそんな努力家な所も好きだけど、そんなに無理はして欲しくない」
「…はい」


頬を赤く染めて恥ずかしそうに目をそらす。
君の全てが愛しい…。



「それに、が私を構わないから、寂しかったんだよ?」
「!……ごめんなさい」
「謝らなくていいさ、



私は立ち上がって、の額に口付ける。



「それより、その努力の成果を私にいつ披露してくれるのかな?」
「えっと…もうちょっと待ってください。どうせなら美味しい物食べて欲しいし!」
「クス…それじゃあ今日は別のものを戴くとしよう」
「え?」



彼女を抱き上げて、ベッドまで運ぶ。



「晃司さん!?」
「ダメかい?すごく美味しいんだけどなぁ…。それに私を放置したお仕置き」
「……うー」



今度は君の美味しい料理に期待しようか…。
まず、君を食べてからね。