「もっとー、お酒持ってきれー!」
「おい、」
「あーぁ…。ちゃんに酒飲ませたらこんなになるのか…」
「総司…お前楽しんでんじゃねぇよ」
「左之助さん!もっと飲まなきゃらめれすよー!」
無理矢理杯に酒を注がれて、俺は仕方なく酒を飲む。
巡回の後、新八と平助、総司、と夕食を食べている時(正確にはしか飯を食ってなくて、俺らは酒だ)総司や新八がに酒を勧めた。
勿論、最初はずっと断っていただったが、平助に半ば強引に飲まされて…。
しばらくしたらこんな調子だ。
いつもは大人しいがかなり強気になって…。かつ、コイツはよく絡む…。
「おう、ちゃん、いい飲みっぷりだね!」
「ほら、総司も左之さんももっと飲みなよー!」
新八も平助も悪乗りが過ぎる。はかなり酒を飲みながら、顔を真っ赤にして目もうつろになっている。
酔いが回ってきたのか、かなり眠そうだ。
「、お前はそろそろ……」
「まだ飲みますー!」
「原田君、ここは僕に任せてちゃん見てあげなよ。なんか明日、大変な事になりそうだし…」
「沖田さん!私なら大丈夫れす!」
「はいはい。ちゃん、呂律が回ってないから」
「悪いな総司」
の腕を掴んで、部屋から抜け出す。
がこうなったのは明らかに俺のせいだ。
恋仲の相手が他の男から酒を飲まされて、酔っ払って…。
しかも、明日フラフラで仕事が出来なかったら土方さんに何て言われるか分からない。
の部屋に連れて行き、台所から水をいれて持って行く。
水を飲むように促すと、少しふくれながら水を飲み干した。まだ顔は赤く、すごく眠そうだった。
「、大丈夫か?」
「うー…。左之助さぁ〜ん」
「大丈夫じゃねぇな…」
溜息をつくと、がゆっくり俺の方に近付いてくる。
潤んだ瞳でジッと俺を見ている、酒が入っているからか、かなり色っぽい…。
男装していても、見ている人には女だとよく分かるし、女だと分かれば女にしか見えなくなって……。
のやる事全てが気になるようになった。
「どうした?」
「…左之助さん」
そして、ピタッと俺に寄り添ってくる。
こんな事、恋仲になってからでもからするなんてことは絶対になかった。
いつも半ば強制的に組み敷いているのだが…。
だから、正直かなり驚いた。
「どうした?お前からこんなこと…」
「少し…そんな気分なんですぅ」
「はいはい。好きなだけ甘えてくれ」
小柄なを抱きしめる。酒の力は絶大だ…としか思えなかった。
「左之助さーん……」
「どうした?」
「呼んだだけですぅ」
「何だよ、それ」
意味が分からなくて、つい笑ってしまう。
は少し前からかなり大人しくなっていた。
酒がどんどん回って、眠いんだろう。さっきから目を閉じては開き、終いには首まで揺れ始めた。
「、眠いなら布団敷いて寝るか?」
「やです!…もう少し、こうやって…」
俺の身体に回している腕の力が強くなる。
の奴、案外大胆なんだな…。
まぁ、普段の仕草とか色々無理してそうだけどな。
屯所で暮らすようになって、男装もしなきゃなんねぇし、汚ぇ野郎ばっかの中で不自由しない方がおかしい。
でも、はいつも俺達に向かって笑顔だった。
「分かったよ。でも眠いなら遠慮せずに言えよ?」
「まだ眠くなんか…」
そう言っているそばから船を漕ぎ出す。
本当、コイツならいくらでも甘やかしてやりてぇって思っちまう俺も、相当重症だ。
しばらく抱き合っているとは静かな寝息をたてて眠っていた。
起こさないように布団を敷いて寝かせてからしばらく寝顔を見つめる。そして、口付けして俺は微笑んだ。
「大好きだぜ、…」
翌朝、の部屋を訪ねると惨状になっていた。
布団の中で丸くなって呻いている。完全な二日酔いだ。
「、薬湯だぞ」
「皆さん……どうして、お酒なんか、飲むんですか…」
吐き気と戦いながら薬湯を飲み干す。は再び布団の中で丸くなる。
「お前はもう絶対に飲むなよ。他の男の前であんな事になったら…」
「あんな事って何ですか!?」
「覚えてないのか…?」
そりゃ、普段飲まない奴がアレだけ飲んだら記憶も飛んじまうか…。
は血相を変えてブツブツ言い始めた。そんなを見かねて、俺は耳元で囁く。
「俺にとってはすっげぇいい事だったから気にするな。それに、俺の前だけなら許してやる」