「ちゃん」
「わっ!お、沖田さん」
「そんなに驚かなくても…。結構傷付くなぁ」
少し寂しそうな表情をすると。ちゃんはとても慌てる。
寒空の下、玄関の落ち葉集めをしているちゃんの手を見ると、寒さで真っ赤になっていた。
「何でちゃんが掃除なんかしてるの?」
「…あ、私が近藤さんにお願いしたんです」
「ふーん」
じっとなんかしてられない…か。ちゃんらしいけど、こっちとしてはあまり楽しくないんだよね…。
「沖田さんの方こそ、起きて大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないかなー。でも、ちゃんが気になって部屋で寝てられないだよね」
「え!?」
「掃除は終わり。ほら、手もこんなに冷たくなってるし、僕の部屋に行くよ」
箒を取り上げて手を掴み、部屋に向かう。途中、一君とすれ違うけど微笑んで通り過ぎる。
「お、沖田さん!」
「何?」
「こ、この格好は何でしょう!?」
「寒いだろうから温めてるの」
部屋に着くなり、僕の前にちゃんを座らせて後ろから抱き締めるような格好で座っている。
ちゃんの心臓がドキドキしているのが感じる。
「わ、私…別に寒くなんか」
「うーん。じゃあ僕が寒いから湯たんぽ代わりね」
「ゆ、湯たんぽって…」
「ちゃん、暖かいなー」
さすがに苛めすぎたかな?下向いて、黙っちゃった……。
機嫌直してくれた方がいいんだけど……。どうしたらいつものちゃんになるんだろう…。考えた事もなかった。
「ちゃん、本当はね、一人じゃ寂しいから相手して欲しいなぁ…なんて」
すると、沈黙しながらちゃんの体がピクピク震えだす。
もしかして…俺、泣かせちゃってる?泣かせるような事なんて言って……。
「…クスクス」
「ちゃん?」
「沖田さん、最初から素直に言ってくれればよかったのに…」
そして、思っていたのが爆発したのか、ちゃんは声に出して笑い始めた。
「ちょっと…そんなに笑わなくたって」
「沖田さん、素直じゃない…」
「…ちゃん酷いなぁ。っていうより、何時からそんなに意地悪になったの?」
ちゃんの方に顎を乗せる。
今日の僕は完全にちゃんに負けてる…。新撰組の皆と一緒にいて、強くなったのかなぁ……。少し、凹むかも。
「沖田さん…」
「なにー?」
「一体何時までこうしてるつもりなんですか?」
「もう少しかなぁ」
それからしばらくちゃんを抱き締めたままボーっとしていた。
そして……。
「総司、入るぞ」
外から斎藤さんの声がして、間もなく襖が開く。
ちゃんの体が強張った。
「…………」
「一君、一体何かな?」
「総司、彼女と何をしている?」
「湯たんぽだよ。ちゃん温かいんだー。僕、寒がりだし…。あ、一君には貸してあげないからね」
「」
「は、はい!」
「…玄関の掃除は平助にやらせてある。安心しろ」
話しが読めないのかちゃんは口をパクパクさせている。
面白い……。
「総司、そろそろ飯の時間だ。湯たんぽで温まるのもいいが、大概にしておけ」
「考えて置くよ」
そう言って一君は出て行った。
ちゃんの力が一気に抜ける。
「ちゃん?」
「斎藤さんに見られちゃいました……」
「嫌なの?」
「恥ずかしいじゃないですかっ!お、沖田さんのバカっ」
「うわ、酷いな」
恥ずかしさで耳まで真っ赤になったちゃん…。
もう、本当可愛いなぁ、ちゃん……。
「ゴメン、ゴメン。僕が悪かったよ」
ちゃんの顔を振り返らせて甘く口づけする。ちゃんはさらに真っ赤にして目をそらす。
「ご飯食べに行こうか」
「……はい」
「あ…また夜も湯たんぽになってくれる?」
「嫌です!お一人で寝て下さい!」
即答して腕を振り払い部屋を出て行くちゃん。
「待ってよ、ちゃん」
今晩は湯たんぽが恋しい夜になりそうだ。